許されない恋なのだとしても。




「じゃあ、髪も黒くなったし、変装も出来たし帰ろうかな」





スクールバックを持ってドアに手をかけた。
今日は嫌なことあったけど、
それと同時に良いことがあった気分。





これから始まるかもしれない
想像し得ない壮絶ないじめとかは
まだ、予測しないで起きたかったし、
今日は切り抜けられたから明日頑張るのみだ。







「そういえば、変装でバレないとは思いますけど、声だしたら分かっちゃいますよね? 待ち伏せとかしてないですかね?」






ドアを開けかけて
その先が無法地帯の荒野だったことを思い出す。
ここが、温かいのと違って
外は冷たい。





結局、この先生だってここを出たら味方ではない。
そもそも、味方のつもりはないんだろうな。
何をやっても、一人なんだろう。



     


「声か……考えてなかった。ということは、もし待ち伏せとかしてて私を見なかったかと聞かれた時には声を出さなきゃいけないのか」




意外と難しい。
見た目はもう大丈夫だと思うけれど
声までは変えられない。






「え……どうしよう」





最終下校時刻だとしても、
あと一時間位ここにいれば……
僅かな希望もあまり意味をなさなかった。






外の道路で座り込んで待ち伏せなんて
彼女にとってはお手の物だし。
……私がやったことに比べれば、
雑作もないんだろう。






「いい案があります」




 
白衣のポケットから、君はスマートキーを取り出した。
顔の横でチャリンと鳴らして
不敵に笑う。





「セクハラ、と言われなければ安全地帯まで送らさせていただきます」




そのチャーミングな笑顔に
魅せられて、奪われて 
それでもいいや。なんて思えてしまう。


      



会って間もないのに、
助けてくれても
欲求不満の相手にしか使われてないのに。

 
 



その素晴らしく不適な笑みに、
私は恋してしまったんだ。






どうしてだろうね、
いつも使っている汚いことばを直したくなる。
傷んだ髪を、潤わせたくなる。
この肌を、触れられるものにしたくなる。






出会って五分、私は不覚にも
変わろうとしてる。





人を頼れたのだって初めてかもしれない。
今まで独りよがりだったぶん、
この人には手を伸ばしたくなる。






だから。







「甘え、ちゃおうかな」