思わず拍子抜けした声が出た。
「理科の教師だから誰もが机にかじりついてるとは言えませんね」
私の振り上げた手は、見事に彼の頬の横で掴まれていた。
隙をつくつもりで利き手じゃない左手を
使おうとしたらそちらも押さえられてしまった。
この状態なら足は掴めないと思ったら
先回りされる。
彼は一切手を出さない。
それは、出したら私が敵わないからだ。
この人、強い……
悔しいけど、渡り合えない。
「関根さんって、桃山先生のクラスですか?」
「そうだけど。何か?」
「そういえぱ桃山先生、赤点者をまとめてたんですよね。関根さん、なんであんなに理科だけ出来ないんですかね?」
「くっ……」
「他の教科は満点同然なのに理科だけ異様に低いんですよね」
涙が滲んだ。
理科だけは、どうしても出来ない。
多分天性のものなんだと思うし、そう思いたい。
「なにが言いたいの?」
涙混じりで言った直後、体が揺れた。
バランスの悪いまま、
蹴ろうとしたり叩こうとしたりしたから
態勢が崩れたのだ。
勝手に予想してしまった未来が、
現実に起きてしまった。


