「もう、いいし」
土下座されると何かむず痒い感覚に襲われる。
そもそも、土下座させる気はなかったし、うん。
「なんか、すみません」
そう言って先生は重い体を持ち上げるかのように
大袈裟にのろのろと立った。
折っていたスカートも戻したし髪も変わったし
バレないだろう、誰かに会ったって。
寧々たちも、これじゃあ気付かない。
「じゃ、ありがとう。色々助かった、じゃあね」
スクールバックを持ち上げると
一定の重さが私にのし掛かる。
「一ついい忘れてたんですが」
「なんだよ」
振り返ってから、深く後悔。
先生の目は、悲しみに濡れていた。
何の、悲しみだろう?
分からないけれどとにかく、先生の目は
悲しい色を含み、私はその目に惹き付けられていた。
「許してください」
ボソッと耳元で呟かれた言葉を最後に。
私は口での対抗は出来なくなった。


