いやいやいや、ちょっと待ってよ。
じたばた、もがきたくても体は硬直してる。
先生が私を抱えて廊下の曲がり角を曲がれば
ちょうどその時に彼女たちが姿を現したのが
よく分かった。
……助かった、ふぅ、良かった。
……じゃなくて。
「せ、先生……」
下ろしてください。
その言葉は声に出されることはなく。
運ばれてきたのは今まで全く縁のなかった部屋。
「ここ、どこ?」
薬品の匂い? なんだか匂う。
「少し匂いますけど我慢してください。理科準備室です」
理科、準備室……
「え、ああ」
「基本的にここ僕しかいないんで大丈夫です。どうぞ、化粧落とすなり、髪を染めるなり」
いやいやいや、だってさ。
かえって二人きりも……怖い。
いや、こんな草食系?の先生だもん、大丈夫か。