「幻滅なんて、なんで? 私、潤哉さんの出張中にデート出来たの、めちゃくちゃうれしかったのに。だからこっちに戻ってきたらたくさん会えるって、バカみたいに浮かれてた」

私の浮かれ具合を知った颯哉には、盛大にあきれられていたくらいだ。

「俺のが、ほんとバカ。……クリスマスまでにこの部屋を片付けて、樹希ちゃんと気兼ねなく会おうなんて、格好つけたことを勝手に考えてたんだ。今まで俺の誕生日なんて、クリスマスのついでだったから」

潤哉さんはいつもより慌てた口調で話しながら、みるみるうちに顔を朱色に染めていく。普段の潤哉さんより三割増しの言葉数で私と向き合おうとしてくれているのだ。年上のひとなのに、その姿はどこかかわいらしい。

もう一度「ごめん」と囁く彼の吐息が唇に触れて、私はまぶたを閉じる。

でも、久々に恋人の時間を共有するのが照れくさくて、かすった唇をすぐに離した。

「……待って。免疫が消えてる」
「免疫?」
「潤哉さんの」

潤哉さんが目を細め、私を見つめる。昔から潤哉さんの優しげな眼差しが好きだったけれど、そこに甘やかさが加わるとなんだか息苦しい。

「改めてよろしくお願いしますって、言ってもいい? 樹希ちゃん」

こんなの、私じゃないみたい。
それでも、じんわりと上がる頬の熱を抑えることが出来ず、潤哉さんの胸に顔をうずめた。

「潤哉さん……週末、一緒にいたいんだけど」
「うん」
「部屋の片づけは」
「善処します」
「……一緒に頑張って、クリスマスしよ?」

ふたりで過ごす時間を重ね合わせたい。

恋人としての新たなときを刻みたい。


大好きなあなたと。


-- End --