2次元は裏切らない



休みが過ぎるのは早い。

家の事をしているとあっという間に休日は終わり、月曜日がやってくる。
今さら学生の頃に戻りたいなどとは思わないが、この憂鬱な気持ちは昔と変わらない気がする。

荒れ狂った髪を綺麗にまとめ、仕事用に薄く化粧をした後、ヨーグルトとカフェオレで朝食を済ませた。
なんとなく付けていたテレビではひっきりなしにニュースが流れているが、いつもBGM感覚で聞き流している。
だが、ふとキャスターが言った「詐欺」のニュースで目を向ける。

〔最近多いんですよね。例えば、よくある話ですがわざと肩をぶつけて接触して来たりですとか……〕

詐欺。
わざと接触。

頭に浮かぶのはあのホストの顔だった。
関連性があるわけでもないのに、なんでもかんでもそれに結びつけてしまう。考えを振り切るように首を左右に振る。時間を確認して慌ててカップを戻し、洗面所へ向かった。



* * *



人酔いしそう。


誰しもが快速に乗ろうと朝早くの電車を待つ。私もその一人だ。
駅は既にスーツを着た人の行列で、どこへ並ぼうにもその列からはみ出してしまう。最悪の事態は免れたいと思い間に合う電車より一本早い時間にいつも乗っているのだが、時間ギリギリについて遅刻でもしたらと考えると不安が募る。

もう一本早いので行ったほうがいいか。

朝から重いため息をつくと、隣にいた中年の男性がこちらをジロリと睨んだ。慌てて口を押さえて視線を逸らす。
憂鬱なのは自分だけじゃないもんね。

できるだけ気分を変えようと鞄から音楽プレーヤーとイヤホンを取り出す。
一般的に有名な歌手の歌も入ってはいるが、いつも聴くのはアニソンとキャラソンばかり。脳裏に浮かぶキャラクターたちの姿に心穏やかになる。

いわゆる隠れオタク(他の人には知られたくないのでこっそり一人で楽しむタイプ)なので、カモフラージュとして普通の歌もいれているのだ。事実、「何聴かれてるんですか?」と仕事場の人に聞かれたことがある。


あの時はさすがに焦った。
本当に聞かれるとは思っていなかったし。

ホームに電車がくる。
これから待ち受けるぎゅうぎゅう詰めの車内の息苦しさを覚悟して、スーツの襟を正した。