カフェを出た後、近くの本屋に入った。
三保は女性誌のブースに、私は2階の漫画ブースで別れた。ここで女子力の差が表れている事に気づいたが見て見ぬふりをするように首を振って気にしないようにする。
何か興味のある物は無いかと視線を巡らせていると、キャッと控えめな声が聞こえてきた。顔を向けると、一人の女性の足元に本が数冊落ちており、体が当たって倒してしまったのだろうと思う。
私も手伝おうと足を踏みだした瞬間、本棚の陰から一人の男性が近づいてきた。
「大丈夫ですか?」
と声を掛けた男性は屈み込み、落ちた本を拾うのを手伝いだす。
すみませんすみませんと申し訳なさそうに繰り返す女性に、いいえと優しげな口調で男性は言った。
なんだか素敵なシーンだな、と思いながら見ていると、男性が礼を言う女性に一枚の紙を差し出した。
会話の内容はよく解らないが、女性はハイ、ハイ、と数度頷いている。余裕が見える態度の男性は、じゃあと手を上げて去って行く。残された女性は手渡された紙をジッと見た後、そっとポケットに滑らせた。
連絡先かな、と思いながら目を本棚へと戻す。
そして、どこかで見たことがあるような場面だと思った。
困っているところを助けてもらう。
礼を言う女性に、男性は紙を差し出す。
「……私と一緒だ」
先ほどの女性は、贔屓目に見ても可愛い人ではなかった。どちらかと言うと地味で、化粧ッ気もほとんどなく、人見知りのような人。
対して男性は、セットされた髪型に洒落たジャケットを着た綺麗な格好をした人。女性経験が豊富そうな人だった。
私と、一緒だ。
財布に入れていた名刺を取り出してまじまじと見つめる。
そして端末を取り出し、店の名前を検索した。
一番上に出てきた店の名前をタップすると、案の定のサイトが出てきて、手に持っていた名刺をぐしゃりと握りつぶした。
