「……終わってるわね」
「終わってるって言わないで」
夜勤明けの休日はゆっくりしようと思い部屋から一歩も出るまいとしていたのだが、友人からの一本の連絡によってそれは無くなった。
高校からの同級生で、一緒に上京してきた友人の岡崎三保は美容師の仕事をしている。都内の地下にあるオシャレな美容院に勤めており、今日は休みを取ったのだという。お互いに仕事の都合で忙しく、月に3回程度しか会えなかったここ最近は、気を休める時間がほとんどなくキツかったので嬉しい誘いだった。
以前からお互いに気になっていたカフェで話そうということになり、天気が良いのでテラスでカプチーノとアイスティー、セットになっているケーキを食べながらここ最近の事を話していた。
「この冷たい街と言われる都内でそんな良い人滅多にいないよ~?なのにアンタは連絡先も名前も聞かずに別れたのか……」
「で、でも名刺くれたよ?」
「店のね!それは個人的とは言わないの!」
ハァ、とため息をつく三保はズゴッとアイスティーを飲む。
別に下心でそういうことをしてくれたわけじゃないのに。
「ただ親切な人がいたっていう話で、別に恋愛に発展するような事じゃないんだってば」
「何言ってんの!26で恋人がいないって危機感じなきゃ」
それにアンタの場合はそれだけじゃないもんね。
その言葉にビク、と肩を揺らす私は、目を逸らしてカプチーノに口をつけた。
長年の付き合いである三保の言い分は聞かなくても分かっていた。
「まだアニメとか観てんの?」
「……あのね、三保」
カップを置き、手を組んで肘を突いて友人を真っ直ぐに見つめる。
私と三保の間に心地良い風が通り、下ろした髪が風に揺れた。
「アニメは私の生き甲斐なの」
「やっぱ終わってるわ」
終わってるって言わないで。
