なんて、長い付き合いのある友人の性格は分かっているつもりだった。


手を組んで感激する私に放たれた言葉は、食材を買いに行け!という命令だった。
冷蔵庫を開けた三保は「ハァ!?」と声を荒げ、ヨーグルトと麦茶、ネギと酒以外何も入っていない空っぽの空間を見てキレた。
殴り書きされた物を片手に、私は薄手のパーカーとジーンズというラフすぎる恰好で薄暗い道を歩く。
団地沿いの道路はほとんど車が通ることはなく、自転車か歩行者専用の道になっていた。そのため、近くの小学生や中学生の通学路として利用されており、家族で住む一軒家の人がどんどん入居していく。自分と同じ年齢くらいの人が温かい家庭で生活をしているのを見ると、羨ましくないと言ったら嘘になる。

「……あ、エコバッグ忘れた」

まぁいいか、丁度生ゴミ用の袋減ってたし。

そう思いながら主婦たちが行き交うスーパーに入る。出入り口のカゴを手にメモを見ると同時に、「アレ」という声がこちらに掛かった気がして顔を上げた。
野菜ゾーンのところでこちらを振り返った金髪の男が、こちらをポカンとした顔で見ている。
その瞬間、私は反射的に回れ右をしてカゴを元あった場所に返し、危うく自動ドアにぶつかりそうになる勢いで外へ出た。

ちょっと!と引きとめる声から逃げるように早足でスーパーから離れる。

どうしてこんなところに……!こんなことってある!?

グンと掴まれた腕が後ろに引かれて体がのけ反る。
肩に触れた手が私の体を受け止め、息を荒げた男が口角を上げて言った。

「……逃げないでよ、おねーさん」

昨日私の唇を奪ったホスト野郎だった。