カーテンで仕切られていた店内は、想像よりも広かった。
白をメインとした壁や椅子にガラスのテーブルで、清潔感が感じられる。
一定の距離を保ったまま客とホストは楽しげに話をしているが、三田は不思議そうな顔をしていた。
「なんか他の店と違いますね」
「そうなの?」
他の店に行ったことが無い私には分からないが、三田が言うならばそうなのだろう。
確かに、もっと騒がしいところかと思っていたが、カフェのような喫茶店のような落ち着きがある。
案内された席に腰掛けると、無料サービスで氷水が運ばれてくる。
「お待たせしました」
白いジャケットを羽織った男が目の前に来て会釈をした。
三田が指名したホストだ。彼は三田の右隣に座り、私にニコリと微笑んで三田と話し出した。成程、指名した客だけでなく他の客を無視しない辺り、気遣いができている。
さっきまで興奮していた三田は、緊張からかいつものキャラを忘れてホストの話にひたすら頷いていた。
「おねえさん」
三田から視線を外して見上げると、明るい髪色の男が立っていた。
電車で会った顔だが、恰好はえんじ色の綺麗目なスーツ。前髪は横に流し、整っている顔立ちがますます際立っていた。
「来てくれたんですね」
嬉しいです、とあの時と同じように愛嬌の良い笑顔で私の隣に座る。
「良いカモだって思ったんでしょ」
来て早々のわざとらしい私の嫌味に、男は一瞬目を見開いてクスリと笑う。
「まさか。心からの善意ですよ。あの時のおねえさんは、今すぐにでも倒れそうなくらい疲れてるみたいだったから」
「……あの時は本当にありがとうございました」
膝に手を乗せて頭を下げると、彼はハハと笑ってどういたしまして、と同じ動きをした。
なんだろうこれ、と笑いが込みあげてきて、ふふっと笑う。
「何飲みます?お酒とジュースと、お茶もありますよ」
「あまり強くないから……軽いお酒で。あと私、3万しかないので」
「了解です」
メニュー表を閉じた男は近くにいた後輩らしい男に注文したものを言伝する。
ふと、隣にはすっかり緊張が無くなったのか楽しげに話している三田がいてフッと笑みを浮かべる。今彼女の中には嫌な上司の存在はスッパリ消えているのだろう。
「心配ですか?」
えっ、と声をあげると、男は私の背後に目を向けた。
「……ちょっとね」
「大丈夫です。呑ませて潰すなんてことは絶対しないので」
信用してください、という男の言葉はきっと本心なのだろう。
けれどそう易々と心許せるわけがない。
手渡された可愛らしい色のお酒を受け取り、一口つけた。
