「いたたた……」


頭を強く打たれたからだ。


後頭部に鈍い痛みが走り続けている。


視界が真っ暗なのは、目を瞑っていたからではないということが、分かった。


ちなみに手足は拘束されているようである。


言葉は話せることからも、口は塞がれていないようだ。


ということは助けを求めるために大声を上げても無駄ということだ。


ピ、ピ、と規則正しい音が背後からするが、それが一体何なのだかわからない。


最後の記憶を呼び起こしてみるが、最後に見たのは彼女の姿だった。


「圭さん……いるんですか?」


呼びかけてみるが、返事がない。


何故彼女がこのビルを爆破しようなどと考えていたのだろうか。


冗談だと思いきや、こんな拘束までされているということは嘘ではないということだ。


「あの……」


「うるさいわね。静かに出来ないの?」


柔らかいムンクの香りがした。


間違いなかった。



「どうして、こんなこと……!」


「こんなこと?」


「ビルを爆破するなんて……」


「あんまり心拍数上げない方がいいわよ」


「え?」


ドキドキと心臓が高鳴る。


それと同時にピ、ピ、ピと背後からなる音が早くなっていく。


「あなたの心拍数によって、それがいつ爆発するか変わるから」


「え……」


「前に言った言葉覚えている?自覚が足りないのよ。松平源之助と付き合うってそういうことよ」