「享さんはどいういうポジションなんですか?」


「んー?俺のお付きの人?」


疑問形で返されて、あずさの頭の上には?マークがたくさん浮かぶ。


「会社違う場所に勤められていますよね?」


確か、享の務めているフロアはアッパーフロアにある、世界的有名IT企業だ。


先日、世界的にも大きな発明をしたとかなんとかで大きな賞を受賞したとテレビのニュースでやっていた。


「ああ、そのプログラミング発明したのは享だよ」


「ええ!?」


「そもそも、このビルの中に入っている人間の6割は松平財閥の人間だと思ってくれていいよ。ビルの中に入っている企業はそもそも松平財閥が出資している会社が多いから、松平財閥にかかわる人間が多く入っているのは必然というか」


丁寧に解説してくれる源之助に「なるほど」と頷く。


「じゃあ、FURADAも?」


自分の勤めている会社もそうなのかと疑問に思い尋ねると源之助は首を横に振った。


「基本的に8階より上の階だけだから。それより下はその他の企業に貸しているだけって感じかな」


「そ、そうですか」


何だか、また違う世界の人間だと言われたような気がして何だかへこむ。



いや、へこむという表現はどうなのだろうか。



源之助に考えておいてと言われたが、いったい何をどう考えればいいのだろうか。



ただ、麗華と源之助が抱き合っていたシーンを見て、胸が締め付けられそうになったのは確かだ。



好きなのだろうか。


分からない。


それに源之助と付き合うのだって難しい。


彼は世間の中では雲の上の存在の人だ。



たまたまこうやって一緒にいることが出来るだけで、覚悟も何もない自分が一緒にいていいのだろうか。


実際に自分と一緒にいようとするだけで、世界的な発明をするような頭のいい男ですら慌てふためく事態になるのだ。


「あずにゃん」


「……」


「変なこと考えてるでしょ」


「……」


「そんなにキスしてほしいの?」


「ち、違います!」


顔が近くに寄せらせて慌てて後ずさる。


フカフカのソファーの上だと逃げることが難しい。


「俺のスティタスじゃなくて、俺のことを見て。あずにゃんはそういう子でしょ」


優しく頭を撫でられて、唇が近づく。


逃げようと思えば逃げられたはずなのに、なぜか動くことが出来なかった。