「してやられたな。あずにゃん顔真っ青だったけど、大丈夫なのか?」


吉伸が心配そうな表情を浮かべて言った。


光之助が関わるといつもそうだ。


絶妙なタイミングを見計らって、源之助を一人にしようとする。


あずさはまだ彼のことをよく知らない。


だから、傍に置いておかなくてはならないと思ったのに。


「……ごめん。吉伸、享」


「ん?」


「ちょっと、俺これからどうかしてるって思われるような行動をするかも」


そう小さな声で呟いた後、源之助は扉から出て行こうとする光之助とあずさに向かって走り出し、追い付くと彼女と光之助を引き離した。


「源之助さん!?」


驚いたような表情を浮かべるあずさを無視して、彼は彼女のことをきつく抱きしめた。


「ごめんね」


小さく謝られた後、彼は彼女の唇に自分の唇を重ねた。


「なっ……!」


「あずにゃん。さっき言ったでしょ。もう少し考えてって」


「婚約しているくせに何を言ってんの!?」


顔を真っ赤にして怒るあずさを見て、源之助は笑った。


「婚約しないよ」


「は?」


「俺にはあずにゃんがいるからね」