「本日は、お忙しいなか、松平源之助、総帥就任パーティーにかくも、多くの方々のご出席を賜りいただき、まことにありがとうございます」


圭の挨拶で会場が一気に静かになる。


名だたる企業の社長や、有名人達が源之助の就任を祝って駆けつけていた。


「兄の光之助ではなかったのだな」


「現総帥は一体何をお考えなのだろうか」


「兄の方がハーバード大学も出て優秀だったのに」


ヒソヒソと噂話が飛び交う。


「祖父が何を考えていたのかはわかりかねますが、私が力及ばずでしたのは確かです」


「おお!これはこれは光之助さん。いらしていたとはつゆ知らず」


「遠慮なさらないで噂話を続けてください」


背後から光之助が姿を現すと、彼らは気まずそうな表情を浮かべ愛想笑いをした後その場を後にした。


「……」


小さく溜息をつく。


壇上に上がった弟はスポットライトを浴びている。


本来であれば、俺がその場所に立っていた。


何故選ばれなかったのか。


それは俺が一番謎だ。


幼い頃から英才教育を受けて、アメリカの大学まで卒業した。


そしてあの弟よりも勤勉に、真面目に財閥の事だけを考えてきたのに。


国内の二流の私立大学を卒業しただけの奴に、こんなにあっさり場所をとってかわられるとは。


気に食わない。


非常に気に食わない。


もう一度深く溜息をついていると、スマートフォンに連絡が入った。


それを見て、光之助はニヤリと笑う。


どうやら暇つぶしくらいは出来そうだ。