煌びやかな世界が目の前に広がっていた。


B.C. square TOKYOの42階から51階まであるホテルの会場を貸し切って、開かれているパーティーは、麗華が言うようなカジュアルなパーティーではない。


だからと言って、52階に帰ったところでそんなドレスを持っている訳でもなく。


ただ単に自分との世界の差を見せつけられているのだと、痛感した。


「あの……」


「なんですの?」


「もういいです。私、帰らせてください」


「あら。逃げますの?」


「……」


挑戦的な口調で、麗華は言った。


「逃げるも何も、最初から戦ってなんかいないです」


源之助と付き合っている訳ではない。


ただの居候の自分に、何を主張しろというのだろうか。


「逃がしませんわ。源之助さんに私の目の前で、しっかりとおっしゃってくださるまで」


「……」


「絶対に……」


何か使命感を感じたような表情で、麗華は言った。


勝手に逃げようにも、背後に黒服の男たちがかまえているので逃げようにも逃げることが出来ない。


どうしようかと考えていたところで、目の前に知っている顔が現れた。


「麗華さん。お久しぶり」


「あら、圭さんではなくて」


そこに立っていたのは圭だった。


「本日のパーティーの取り仕切りは私が担当させていただくことになりまして」


「そうでしたのね。知らなかったわ」


「そちらのお客様は?」


ニッコリと笑って圭はあずさの方を見る。


真っ赤なイヴニングドレスを身にまとっている姿は圧巻の一言だ。


こんなに人を美しいと思ったのは、今日が初めてだ。


思わず見惚れてしまう。



「ああ、お気になさらず。ただのゲストですわ」


ニッコリと笑顔で言い返す麗華。


「あらそう……困りましたわ」


眉を顰めて圭が言う。


「何か問題でも?」


「本日のパーティーはドレスコードを指定しておりますの。麗華さんのお連れ様の恰好では少々参加は難しいですわね……」


「……」


「……」


沈黙が続いた。


「どうすればよくて?」


笑顔が表情から消え、冷たく麗華が言った。


「こちらでお預かり出来ましたらと思いまして。悪いようにはいたしませんわ」


「……いいわ」


少しの時間考え込んだ様子だったが、麗華は圭にあずさを預けることを承諾した。