気付けば受験。


地元の高校に行く
あたしにはそこまで
難しい受験ではなかった。


でも、
祐次は違ったの。


『梨華?』


『ん?』


『俺さ、スポーツ推薦で
おかやま山陽に行こうと思う』


『うん。』


薄々勘づいてた。

でも、気付かないフリをしてた。


離れたくなかったから。

広島と岡山の遠距離を
耐えられるほど
あたしはまだ大人じゃない。



『梨華?』


『ん?』


『ちょっと遠いけど、
遠距離頑張ろうな。』


『……』


うんって言えなかった。


『あたしは遠距離頑張れる自信がないの。』


『えっ?』


『祐次の事は好きだけど、
大好きだけど、
あたしには無理だよ。』


『別れるって事?』


『うん。』


『俺とじゃ頑張れんの?』


『祐次と一緒にいたいよ。
大好きだもん。
でも、遠距離は無理だよ。』


『…そっか。』


『ごめん。』


『梨華?』


『ん?』


『最後にキスしていい?』


『えっ?』


『いい想い出にしたいんだ。』


『うん。』


あたしらは
初めてキスを交わすかのような
震えるキスをしたの。

涙の味がして、
本当にばいばいなんだって
あたしの心を
締め付けていく。


あたしが幼かったの。


祐次は頑張ろうって
言ってくれたんだ。


でも受け入れられなかった。


ごめんね。