「お前、口で物言わない分、顔で訴えかけてくんだよ。面倒くせー」

「ご、ごめんなさい」

「謝るな、面倒くせぇ」

「ごめ……あっ」


また謝ろうとした私を、なっちゃんがギロリと睨んだ。

うっ……怖いっ。

なっちゃんだって十分、顔で語ってると思う。

なんて、怒られるから絶対に言えないけど。



「とにかく、俺もそうしてーと思うから行く。分かったか?」

「わ、分かりました……」

「んじゃ、抜け出すぞ。……本当に、いいんだな?」


そう言ってなっちゃんが私の手を掴み、軽く引く。

この手を取った時から、覚悟は決めてる。


ほのかちゃん、私……。

行きたいところへ行ってみる。

そうすれば、何かが変わるような、そんな気がするから……。


「うん、お願いします」


確認するように私を見つめたなっちゃんに、強く頷いた。


弱虫な私が、強くなるために。

ほのかちゃんがくれたきっかけだから……無駄にはしたくない。


そして私達は、ナースステーションにいる看護師さんの目を盗んで、病院を抜け出したのだった。