「俺は、お袋の身代わり人形になるつもりはさらさら無いし、親父のために生きてるわけでもない」
「あっ………」
それは、まるで自分に向けられている言葉に思えた。
今まで、お父さんとお母さんの言葉に従って生きてきた。
それが正しい事だと諭されて、心の中では反発していても、言われるがままに……。
「………その気持ちは、私にもわかるよ……」
「ふう?」
つい、零れた本音。
なっちゃんが自分のことを話してくれたからかな、私まで口が滑ってしまった。
「前に、私は自分の性格が嫌いだって言ったことを覚えてる?」
「あぁ、あの時は聞きそびれた」
「………私は、小さい頃から心臓が悪くて、両親から大事に育てられたの……。それはもう、過保護なくらい」
私は、なっちゃんの体温ですっかり温まったオレンジジュースをベンチに置いた。
そして、青空の下、流れる雲を見上げる。


