「ふうにも聞こえてたと思うけど、俺の母親は、俺のせいで死んだ」
「っ……それは、どういう事?」
「心臓の悪かったお袋は、俺を産んですぐ死んだんだ。もともと、リスクはあるって言われてたのに、命を犠牲にして、俺を産んで……」
そういう、事だったんだ……。
だけど、それじゃぁなっちゃんが殺したなんて、言い方は、違う気がする。
お母さんは犠牲になったんじゃなくて、
なっちゃんを愛していたから……命を賭けられたんじゃないかな。
「俺は、お袋を殺しておいて、自分だけが助かりたいだなんて、思わない。手術なんてごめんだ」
「なっちゃん………」
だけど、どの言葉もなっちゃんには気休めにしか、ならない気がして、私は口をつぐむ。
「それなのに、親父は俺に手術を受けさせようって躍起になってやがる。昨日もそれでふうの部屋に逃げ込んだんだ」
「そうだったんだ……。でも、なっちゃんが心配なんだよ……」
そんな、お父さんの事を忌々しそうに……。
なっちゃんはどうして、そこまでお父さんの事を嫌うんだろう。
「違うね、親父は……怖いだけだ」
「怖い……?」
「お袋の姿を、俺に重ねてる。昔からそうだった、「お前は母さんの命と生きてる」って、耳が腐るほど言い聞かせられた」
なっちゃん、もしかして……。
「お母さんの分まで生きて」、そう言われることが、重荷になってる……?
そう言われる度に、お母さんが自分のせいで死んだんだと、自分が責められているように思えるから……。


