立ち聞きしてなんだけど、私は……。
「触れられたくないもの」
「なんだ?」
「なっちゃんの、触れられたくないものだと……思って」
私にもある……触れられたくないもの。
ずっと本当の気持ちを偽って、家族の前で前で良い子を振舞ってた事。
何でも心の内に秘めて、思った事を言えない性格。
「それを、他人からとやかく言われるのは……嫌な気持ちになる、そう思った」
私だって分かってるのに、わざわざ言わないでよって、そんな気持ちになるから……。
「ふう……」
驚いたように私を見つめるなっちゃんに、私は苦笑いを浮かべる。
「でも、立ち聞きしちゃったのに、説得力無いね」
「それは、俺が怒鳴ったからだろ。ふうは悪くねーよ。だから、気にすんな」
なっちゃんは、そう言って私の頭をポンポンと撫でる。
それに、とても甘やかされてるような気がして、恥ずかしくなった。


