「2人の言いつけを破って病院を出るのは怖かった。だけど、私にはどうしても行きたい場所があったから…」
「それは、あなたがいつも見ていた、沖ノ島の海?」
「うん、そうだよお母さん」
私が毎日飽きもせずに見ていたから、お父さんもお母さんも私の気持ちには気づいていたんだと思う。
「お前は、昔から物分りがよかった。だから驚いたんだ、病院を飛び出したと聞いてな」
「お父さん………」
お父さんは俯くと、小さな声でそう言った。
それに、私は胸が締め付けられる。
きっと、私がいなくなった後の2人の不安や心配はとても大きかったんだ。


