「ふう姉、その人の名前は……」
ーーーなっちゃん……。
うん、今なら迷いなくあなたの名前を呼べる。
「………小野 夏樹……私の、最初で最後の初恋の人だよ」
「そっか、ふう姉は見つけたんだね」
そう言って微笑んだほのかちゃんが、私の事を強く抱きしめた。
その時視界に入ったほのかちゃんの髪が、キラキラと輝いて、その姿を消していく。
「ほのかちゃんっ、透けてっ……」
ほのかちゃんが消えないようにと、私は必死に抱き締め返した。
だって、またあの時みたいにほのかちゃんが消えちゃうっ。
私の腕の中で………っ、そうだ、ほのかちゃんは私が抱きしめたまま、亡くなって……。
どうして、忘れてたんだろう。
この世界に感じた違和感は、ほのかちゃんの存在だった。
「いいんだよ、私は初めからこうなるはずだったから…」
どんどん存在が消えていくほのかちゃんは、何故か取り乱すことなく私に語りかける。


