「そう、私は……好きな人が、大好きな人がいた……」
なのにどうして、思い出せないんだろう。
頭の中がモヤモヤする。
今、核心に触れられそうだったのに、逃げられた。
「へぇ、ふう姉の好きな人って、どんな人?」
どんな人………。
頭の中に、眩しいアッシュゴールドの髪が風に靡くのが見えた気がする。
『何があっても、諦めるな。諦めそうになったら、俺の事を思い出せ』
不意に、懐かしい声が聞こえた。
「………不器用な優しさで、私を守ってくれる…。私に、勇気をくれる…人…」
『そうだ、俺も不安になったら、ふうの事を思い出して、諦めねぇから』
私の事を思い出して、今も生きようと戦っているだろうあの人。
「私を、必要としてくれてる……もう、離れるなんて出来ないくらいに……好きな、人……っ」
頬を、嬉しさと切なさで涙が伝わっていく。
どうして、私……今まで忘れちゃってたんだろう。
こんなにも愛しい人の事を。


