「オラ、話せ、風花」
わ、いきなり呼び捨て……。
すごく……初対面にして、距離が近い。
「おい、聞いてんのか?」
「……………」
人見知りとか、しなさそう。
あ、でも……見た目で逃げられちゃいそうだなぁ……。
「風花、お前またボーッとしやがって……」
「ハッ、ご、ごめんなさいっ」
呆れと苛立ちを足して2で割ったような複雑な声に、私は我に返った。
また、ボーッとして……さすがに呆れるよね。
苦笑いを浮かべて、私は男の人を見つめる。
というか、この人の名前を聞きそびれた。
「あの、名前を……」
そう気づいた私は、早速尋ねる。
「あ?そういやー、言ってなかったな。小野 夏樹(おの なつき)だ」
「夏樹さん……」
「ゲッ、さんとかヤメロ……鳥肌立つ」
えええっ、鳥肌立つとか……ひどい。
夏樹さんじゃなかったら、なんて呼べば……。


