俺にはコーヒー、自分にはホットミルクを入れてリビングに移動した。
飲みながらため息をついて
「お仕事の後に祐也が無理を言ってごめんなさいね」
と謝ってきた。

「こんなこと何でもないですよ。それより体調悪いんだから、早く休まなきゃですね。そろそろ帰りますよ」

「すみません。もう体調はいいんですけど。山口さんにはまた改めてお礼をしますね」
頭を下げる。そして、祐也に帰ってくるように言わなきゃと言ってスマートフォンを手に取ると祐也にメールをした。

「今度、何かごちそうします。どこに行きましょうか?この間はスペインバルだったから、フレンチ?和食?」

「いえ、お礼は絵里子さんの手料理がいいんですけど」
絵里子さんの目を見てはっきり言った。

絵里子さんは目を見開き、口は「え」の形で固まったが、顔を赤くしてうつむき「はい」と言った。

廊下が騒がしくなり、リビングのドアが開けられる。
祐也と鈴木が戻ってきた。

「じゃ、帰ります」
ソファーから立ち上がる。

「山口さん、ありがとうございました。絵里子さんに説教してくれました?」
祐也がニヤニヤしながら俺を見る。

「失敗だろ」
鈴木が口をはさんだ。
「絵里子、着替えて化粧までしてる」

祐也がじろっと絵里子さんを見る。
「あ、本当だ。母親がオンナになってる」

「ゆうやー!余分な事言ってないでさっさとお風呂!」
絵里子さんは真っ赤になって、祐也の背中を叩こうとしたがサッと逃げられた。

「母が怖いのでお風呂に入ります。山口さんありがとうございました。また来て下さい」と走って洗面所らしきドアに向かって行った。

もうって怒っている絵里子さん。

「絵里子、俺が山口さんを送り出すから、お前はこのままここにいろ。もう休め。鍵も閉めていくから」
鈴木が優しく言った。

絵里子さんは
「わかった。凌くん、お願いします」と素直に応じていた。
俺に向かい
「本当にありがとうございました。気を付けて帰って下さいね」とまた軽く頭を下げた。

「おやすみなさい」
鈴木と2人玄関に向かう。

鈴木が「えりこー、ちゃんと寝ろよ!」と廊下からリビングに向かって大声を出して玄関を出てガチャっと玄関の鍵を閉める。

そして俺の顔を見て「山口さん、まだ時間ありますか?」と聞いてきた。

こっちも聞きたいことだらけだ。
「もちろん」

「じゃ、ウチに行きましょう」