「あ、やっぱり興味ありました?」

薄ら笑いの鈴木に腹が立つ。
何か知ってるのかよ。

「いや、別に」
目線を逸らして強がる。

「祐也が絵里子と店に来る途中で、絵里子の勤務先の若い社員に出会って、目の前で自分の母親が若い男からお茶に誘われてたって話をしてたんでね」
くすくすと笑う。

え、あれはお茶に誘われていたのか!
さっきまで2人でお茶をしていたのか!
胸の奥がじりじりとするが鈴木の前で表情を出さないように堪える。

「あ、でも見た目は若くて俳優並にイケメンらしいけど、中身はオネェらしいんで心配ないですよ。絵里子から見たら女同士でお茶に行く感覚だって」

俺の様子を観察するようにもったいつけて鈴木は言った。
こ、こいつ。
絶対俺をからかっている!

じろりと鈴木を見ると、声を出さずに肩を震わせて笑っていた。

「いや、これどうでもいい情報でしたね。すみません」
そう言うとフロアに戻って行った。

鈴木のヤツ、腹立つな。
でも、相手の情報が手に入り安心した。
そうか、オネェか。
そうか、そうか。
うん、うん。

今の奴は心配いらないのか。
腹の底にたまったどす黒い何かは溶けてなくなるようだったが、まだ鈴木の存在があるじゃないか。

お前と絵里子さんの関係は何だよ。
変なプライドが邪魔をして鈴木に聞くことが出来ない。
バカな俺。