君のまなざし

笹森さんは鈴木の隣に座り若い後輩達に
「鈴木さんはうちの祐也の大切な人だから、みんな私に無断で手を出さないでね」
絶対だめよと冗談めかして笑って宣言していた。

うん?
何か違和感を感じる。
2人の間の空気。個人的付き合い?

えー、イケメンの一人占めはズルイ~
と女性達は文句を言うがみんな笑っていて怒っているわけではないらしい。

「飽きたら私に下さいね」
「仕方ない。メンクイの絵里子先輩に鈴木さんは譲りますよぉ」
「絵里子先輩とユーヤ君の大事な人には手を出しません」
みんな軽い感じで笹森さんに返すと鈴木に固執することなく井出や木田と盛り上がっている。

これが普段の飲み会だと女性達の興味は鈴木に集中する事が多い。
そして、鈴木はそれをかなり嫌がる。
そのため女性がいる飲み会には参加しない事が多いのだ。

それを知っての行動なのかな?
笹森さんの行動は鈴木が不機嫌オーラを出すことないよう女性達からブロックしたようにも見える。

木田と井出が女性達と盛り上がり始めると、美樹さんが俺と柴田の前の席にビールを持ってやってきた。

「柴田さん、何年振りですかね」
「最後にご一緒してから5年以上はたっているかもしれませんね」
と和やかに話し始める。

「2人はどんな知り合いなの?」
さぁ、早く話せと身を乗り出すように聞くと

「仕事のだよ」
「最初は高校野球の球場でしたよね。次は柔道だったかな」  

本当に仕事で知り合ったらしい。
アスレチックトレーナーとして、いろいろなスポーツイベントに派遣されていた柴田はナースとして派遣されていた美樹さんと救護所でよく一緒になったのだと言った。

「でも、柴田さんは私より絵里ちゃんと一緒の仕事が多かったですよね。泣き虫ユーヤがオムツしてた頃だからもう13年とか14年前とか?」
あの頃は若かったわーとかって笑い出す。

そんな昔からの知り合いだったのか。
驚いた。

聞けば、柴田は小さい頃の祐也に何度か会ったこともあるらしい。