笹森祐也は鈴木トレーナーと下半身強化プログラムを行っていた。
傍らに置かれた個人データを見ると、スポーツクライミングのユース選手らしい。

インターバル休憩を見計らって声をかける。
「笹森君、店舗責任者の山口です。よろしくね」

「あ、はい。よろしくお願いします」
しっかり真っ直ぐこちらの目を合わせて返事がある。

お、息子もまたイケメンだな。
二重まぶたで大きな瞳。
母親よりもダークな茶色の瞳がまた男らしさを強調している。意志の強そうな濃いめの眉。引き締まった口もと。
まだ中2だから幼さがあるが、将来が楽しみだ。

「山口さん、祐也はイケメンでしょう」
鈴木トレーナーが話に加わる。

「鈴木さんには遙かに及びませんよ!超絶イケメンのくせに何言ってんすか」
祐也は恥ずかしそうにするが、笑顔もかわいい。

ああ、笑顔もかなり母親似。
先ほど見た母親の笑顔がだぶる。

「ああ、でも、笹森君はイケメンだな。もてるでしょ」
と鈴木に同意すると更に照れ笑いしている。
もてるんだな。
最近は肉食女子が多いからさぞかしたくさんのアプローチがあるんだろう。

「鈴木から女の子の断り方も教えてもらうといいよ」
鈴木トレーナーは芸能人ばりにイケメンで会員の女性や保護者から絶大の支持を集めている。

だが、そのイケメンは昔からイケメンで苦労をしてきたらしく、しつこい女性にはかなりクールな対応をする。

女性から必要以上に話しかけられたり、誘われたり。彼女に対して嫌がらせされたりと過去に色々あったらしい。
女性からのアプローチは鈴木にとって苦痛以外の何ものでもないらしいのだ。
ま、モテるヤツの気持ちなんて俺にはわからんけど。