「芽衣!どこいってたの!」
「ちょっとトイレ」
「あ、そう」
小雪はあっけらかんとして、戻って行った。

ガラガラガラ

山川先生が来た。その後には、、、如月先生。

「よし、起立」
みんなが立ち上がる。
「礼」
「おねしゃーっす」
「着席」
クラスメイトたちはもうノーマルテンションになってる。その変貌ぶりに私はビックリしてしまった。
「これで、お前達と同じ教室にいるのは最後だ。お前達はなんだかんだ言って、いいヤツばっかりだったな。お前らの卒業式に担任として出たかったな…」
山川先生はいきなりハンカチを出して泣き始めた。
「おい、先生泣くなよー」
こう言ったのは、玲夏だ。
すると、周りの男子たちも口々に言い始める。
「俺も山川のこと好きだったぜ!」
「山川が俺のプリントにこぼしたコーヒー、まだ覚えてるよ」
山川はもっと泣き出した。
「ありがとう、、、」
「いい子たちなんですね」
如月先生が口をはさむ。
「もう、ほんとに、、、俺もよく怒ったけど、イイヤツだよ」
玲夏がその時、立ち上がってみんなに言った。
「俺たちでお礼言お?」
「だな!」
「じゃあ、きりーつ!」
私たちは立ち上がった。
「山川!ありがと!」
みんな、キラキラの笑顔だった。
若いな~~~って思った。青春だな~~~って思った。

みんなで先生と最後のHRを分かち合うと、山川先生はこのクラスから去っていった。

「よし、じゃ、みんな席につこっか」
如月先生は耳にかかった真っ黒の髪の毛を払って、みんなを席につかせた。
「改めて、自己紹介するね。今日からこのクラスを担任する、如月です」
如月先生は名字と名前を黒板に書く。

かっこいい名前だな、、、
私はそう思った。やっぱりドキドキは止まらない。

「明るいに北斗七星の斗ってかいて、めいと、ね?じゃあ、みんなにも自己紹介してもらっていいかな?」
玲夏がいち早く反応する。
「いいっすよ!」
「おーけー。じゃあ、一番の子からおねがい」
すると、小雪が立った。
「えーっと、はじめまして、相川小雪です。こゆきってかいて、こゆ、です。よろしくおねがいします」
小雪が座るとまばらな拍手がきこえる。
「ありがと、相川さん。じゃ」
如月先生は切れ長の目で次の子に合図する。
「はい、、、」

そうやって自己紹介が続いて、私の前の、玲夏の番が来た。
「はじめまして、白井玲夏です。このクラスの学級委員やってます。ついでにいうと、男の子に見間違われます。よろしくおねがいします」
ここで少し笑いが起こる。さすが、玲夏。
「よろしく、学級委員さん。じゃ、次」
如月先生がちらっと私に目をやる。そこで、少し反応する先生の瞳。覚えているのだろうか?
ってか、、めっちゃドキドキしてる自分を呪う。
「え、、えっと、、」
私はぎこちなく立ち上がった。
「はじめまして、鈴木芽衣です。植物の芽、と、衣ってかいて、めいです。よろしくおねがいします」
私はほっとひと安心する。
ここで、少し先生のことを見ると、あの不思議な目が私のことをわらっていた。
「芽衣ちゃんっていうんだ。よろしくね」
すると、小雪がこっちを見る。
「え、如月先生、芽衣のこと知ってるの?」
如月先生は笑った。
「はじめまして、ではないよね?僕の記憶違いじゃなきゃ」
「は、、はい」
「僕の不注意で、昨日かな、曲がり角でぶつかっちゃったんだよね」
「いえ、私が悪かったんです」
「ケガはないようでよかった。じゃ、次」

こうやって自己紹介が進められていった。最後まで行ったとき、、

キーンコーンカーンコーン

チャイムがなった。
「あ、ちょうど良かったね。次にお会いするのは、、、4時間目か。じゃあ、またね」
如月先生は号令もかけないで教室からでた。

「めーい!ちょっと!なんで知り合いだって教えてくれなかったの!?」
「知り合いじゃないよ。ただぶつかっただけ」
「ねー!ちょっと、かっこよくない??めっちゃイケメン!いいなー、芽衣、結構喋ってもらえてたよね!」
「別に何とも思ってないけど、、、」
「いいなー!ね!そうだよね!」
「うん!」
小雪の友達の紗愛弥が同調する。
すると、小雪は紗愛弥のほうに行って話し始めた。

また嘘ついちゃった。ホントはうれしかったのに。ホントは心臓壊れちゃうかと思ったのに。

なんだろう、このキモチ...。