「玲夏ー!」
「よ!芽衣!」
「玲夏、昨日ありがと!お陰で佐々木くんとLINE交換出来たんだ!」
「良かったな!俺のお陰だからな。一生分感謝しろよ?」
「うん!」
...確かに玲夏は教えてくれたよ。でも、、、
「昨日より女子力上がってるな、お前」
「そうかな?」
「自分で気をつけてるっしょ?」
「うん」
...いや、別に気をつけてないんだ。私の中の何かが変わったの。あの人のお陰で...
「今日もマネ?」
「毎日だよー。大変だわ...」
「がんばれ」
「がんばる!」

完璧な嘘つきだ~~~。
私、、、どうしたんだろ?
しかも、このドキドキ。なんか耐えれないな。
ため息がでちゃうよ...。

「芽衣!」
「小雪~~~、どうしたのー?」
「前、芽衣言ったじゃん?新しい先生のこと」
「ああー。それね」
「もう今日から来るらしいよ?」
「えー、5ヶ月後とかって言ってなかった?」
「そうなんだけどさー、急遽そうなっちゃったって」
「楽しみじゃない??」
「まあ。...なんか、芽衣変わった?」
「そう?」
小雪が疑わしげに見てくる。
「もしや、、、彼氏?」
「いないよぉーー?」
「あやしー」
小雪は探るような目つきをしながら自分の席に戻っていった。
それを目で見送った時、教室の窓から見知らぬ顔の男の人が見えた。
あれが新しい先生?
ん、、、ちょっと待って。
見知らぬ顔じゃないよ。

昨日会った人じゃん...。

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴って、私たちは朝読書の準備をし始めた。でも、その時、放送がかかった。

~今日の朝読書はありません。全校生徒は体育館に集まってください~

嫌いな教頭の声だった。聞く度にムカつく。

「えー、何の用?」
「俺、今日はちゃんとマンガもってきたのに」
「校則違反だろ笑」
「マンガじゃなくて、エロ本だろ?」
「読みたい?」
これぞバカの極み。
学級委員の玲夏はそんなバカたちをまとめて廊下につれだし、列を作らせる。
「堺~~~並べー。...おい、秋元!そこで幼稚園児みたいな事してないで早く並べ!もう行くぞ?」
玲夏を先頭に3年B組は列をなして歩き始める。

ガラガラガラ

全校生徒が来たのを確認して、生徒会長が体育館のドアを開ける。

私たちはその中をみた。
あの人が、いた。

私たちは指示されたところに並んで体育座りをする。真衣言われて、今日はスカートの下をジャージじゃなくて、見せパンにしてる。なんか落ち着かない。
あの嫌な教頭が全員座ったのを確かめてマイクを持ち、喋り始めた。
「おはようございます」

シーン

「おはようございます!」

それでもボソボソと聞こえるだけだ。あんな奴に返事したくない、という事なんだ、これは。

「えー、今日の朝読書がない理由は、まず、新しい先生がお越しくださってからです。まずは先生の紹介をしたいと思います。
こちら、如月明斗先生です。新卒だそうですから、皆さんとは1番なじみ深い先生なのでは無いでしょうか?」
すると、如月先生は少しはにかんだように笑う。
「如月先生、自己紹介をおねがいします」
新しい先生はマイクを受け取り、皆を見回した。
やっぱり、あの人だ。あの時から私の気持ちは変わってない。むしろ、もっとドキドキしている。
「はじめまして、皆さん。如月明斗といいます。皆さんには、数学を教えることになります。
この学校も、先生としての仕事も初めてなので、不慣れだとは思いますが、よろしくおねがいします。...もう諸連絡しちゃいます、教頭先生」
「あ、、、はい」
「僕は、本当は2年A組の先生の代わりで来たんだけど、3年B組を受け持つことになりました。それで、」
すると、一気に緊張が溶けたように私のクラスから歓声があがる。逆に2年A組と思われるクラスは落胆の声をだしている。
「最後まできこ?」
如月明斗先生は私たちを静めさせた。
「それで、2年A組のクラスは、3年B組の担任の先生だった、山川先生に受け持っていただくことになりました。なので、自動的に両クラスの数学の先生も決まりましたね?はい、3年生の数学の先生が僕、2年生が山川先生、ということになります。3年生のクラスの皆さん、よろしくおねがいします」
2年のクラスからブーイングが沸き起こる。
「なんで俺たちが山川なんだよ!」
「ふざけんな!」
如月先生は冷やかな目で彼らを見つめた。
すると、2年の男子どもはマッチの火が消えるように静かになる。
「じゃ、解散してください」
如月先生はマイクのスイッチを切って、学級委員に指示を始めた。
玲夏が戻ってくると、うちのクラスは妙なテンションでクラスに戻った。

私は、なんか玲夏とも小雪とも実依沙とも喋りたくなかったから、トイレに行った。
個室に入って、壁に寄りかかる。
ため息が私の口をついてでた。

なんか、、、ビミョーな気分だ。
如月先生がうちの担任になるって知って、さっきはどう思ったんだっけ?
嬉しい?悲しい?
一言では言えない感情が私の中でぐるぐる回ってたはず。

だから、、ビミョーなんだよ。
複雑だな。ってか、自分が何を思っているのか全く分かんない。
なんでこんな気持ちなのか。
なんでドキドキしてるのか。
なんでトイレにいるのか。

怖いな。自分の居場所まで分からなくなってる。
ここは学校の中のトイレ。
自分で自分に教えてあげた。

キーンコーンカーンコーン

HRだ。戻らなきゃ。