幕末を駆けた桜




目の前にいつの間にか八木邸があり、沖田の言葉に少し驚きながら顔を上げる。


沖田は、僕をからかう時にちゃん付けをするらしい。

あ、前言撤回…僕だけでなく、誰かをからかう時にらしい。

ちゃん付けの所為でバレたんだからな、坂本の事。
呼ばれる度に思い出すんだよ。


『真白、置いていくぞ』


『あ、ああ…すまない』


土方に呼ばれ、先を歩く沖田と土方に遅れを取らぬよう駆け寄って後ろに並んだ。

八木邸には何故か門番がおらず、中に入ろうと足を一歩踏み出した瞬間だった。


『……土方!』


何か反射するものが見え、慌てて土方の背中を押した。

先ほどまで土方が立っていた所に視線を向けると、地面に斜めに刺さった弓を見て、思わず舌打ちしたい気分になる。

だが…。



『……外れて残念だっな…』


刺さった弓を抜いて、弓が放たれたであろう方向と逆の方向を見てニヤリと口角を上げた。



『出てこい……標的にあたっていないのにも関わらず、弓が放たれた方向に居残る馬鹿を相手にしているつもりはない』