幕末を駆けた桜




この男は、危険だ。
それに、どこかで見た顔だし。



関わったら面倒なことが起こる気がする。


『……後ろ‼︎』


少し古典的な方法で、叫びながら後ろをさした僕の言葉に男が振り返ったのを見て、全速力で逃げる。


『なっ、逃げないでくださいよ‼︎』



後ろから、気づいた男の声が聞こえた気がするけど。


逃げるなだなんて言われてもな…⁇
そんなので止まるほど、僕は馬鹿じゃねぇよ。


後ろを振り返らずに、土地勘の無い今日の街を走り抜ける。


建物を曲がって、巻こうとしてもしぶとく男はついてくる。


少し息が上がり、走る速さが落ちてきた時だった。


イキナリ建物から伸びてきた手にひかれ、中にひきづりこまれる。



『んんッ⁉︎』


『……静かにしろ』