幕末を駆けた桜




それでも、この時代を生きている武士なのかと疑いたくなる。



どうせ、自分が武士であることを棚にあげて、街の人たちから金をせびるような真似しかしてないような、器の小さい男だったんだろう。



そんな男1人殴ったって、僕に非があるわけではないよな?


倒れた男をそのままに、竹刀を肩にかけ直して僕に向けられる視線から逃れるために足を進める。


こんなに目立つのは、ごめんだ。


これ以上、僕は無駄な体力を使いたくないんだ。


その場から離れようとした僕の肩を、誰かに軽く叩かれて後ろを振り返る。



そこには、腰に刀を差して、おもちゃを見つけたような表情で笑う男。


そんな男を見て、思わず頭の中で危険な信号が鳴り響いた。


僕の本能が心のそこから叫んでいるのを感じ取り、じりじりと男から距離をとる。



『何故後ずさるんです⁇』



『……何故だろうな』



ニッコリと笑いながら後ずさる僕に、少しずつ距離を詰めてくる男の言葉に苦笑いを返す。