幕末を駆けた桜




キッと睨みつければ、坂本は頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。


『あれだな。みんなお前が心配なんだろ』


……心配?

今更、何を心配する事があるのだろうか。
拳銃の使い方は心得た。
自慢じゃないが、新政府軍の中でもトップの実力の自信もあると言うのに。



『ま、お前が出たけりゃ良いんじゃないのか?
怪我さえしなければ誰も何も言わねえよ』


『……良くわからんが、取り敢えず怪我をしなければ良いんだろ? お安い御用だ。

……沖田! そろそろ手合わせするぞ』



遂に豊玉発句集の話まで持ち出して来ていた沖田に声をかけると、怒る土方をそのままに沖田が駆け寄って来る。


『あ、ごめんごめん。豊玉さん弄りが楽しくてね』


楽しそうに満面の笑みを浮かべてそう言った沖田に、特に何も文句もなく小さく溜息をついた。


土方弄りが楽しいのは心の底からわかる。
反応が、な?

一々大袈裟に反応してくれるから弄りたくもなるもんだ。


『たっのもー! って、あれ?
真白と総司がいるの珍しいな』



元気に扉を開けた藤堂の声が、あまり人のいない…と言うか、僕と沖田と土方と坂本の4人しかいない空間に響く。


勢いよく扉を開けた張本人は、思ったよりも人数が少なかったらしく首を傾げた。



『藤堂、すまない。使う予定だったか?』


『んー…真白、総司と試合すんの?
終わったら俺ともやろうぜ』


ニコニコと笑いながらそう言った藤堂に頷いて返し、さっさと始める為に立ち位置へと向かう。


伊東の事件以来、藤堂に…というか、組長方に妙に懐かれた気がするのは何故なんだろうか。
まぁ、嫌われるよりは数倍マシだから良いけれど。