幕末を駆けた桜



椅子にかけてあった羽織を肩にかけ、未だに携えている刀を手に取る。


……今や、新政府軍の兵達は大方が拳銃の扱いを訓練している。

銃弾の形を変え、回転する様式の拳銃を作る様に鍛冶屋に頼んだのはつい先日。
先程、銃弾のみ届いたが、やはりこの時代の日本人の技術は素晴らしかった。



『そう言えば、沖田“中将”は拳銃の訓練はしているのか?』


ワザと“中将”と強調してニヤリと口角を上げれば、心底嫌そうな顔をした沖田が溜息をついた。


『その中将やめてよ。で、拳銃だっけ?
そりゃあしてるけど、何だかなぁ……』


『刀から銃へと戦い方が変わった事が少し寂しいか』


最近、元新選組のメンバーが偶に寂しそうな、何かを失ったかの様な表情を浮かべている事には気づいていたが、この事はどうにも出来ない。


今のうちに使える様になっていなければ、この先が大変だ。


『そう。……まぁ、仕方ないんだけどね。
それに、刀が使えなくなったって訳じゃない』



そう言って笑みを浮かべた沖田にこちらも口角を上げる。


『沖田なら、銃でも天才って言われるんじゃないのか』


『そうかな。銃…射撃の訓練は真白君の得意分野でしょ』


『得意って訳でもない』