幕末を駆けた桜




その夜。


僕は部屋の襖の前に立ったまま、中々入ろうとしてこない人間に苛立っていた。


多分、入る勇気がないのだろう。
……誰かも分かっているのに。



『いい加減、入ったらどうだ。土方』


ため息混じりにそう言うと、立ち止まった人影ら襖越しに入ると声をかけ中に入ってきた。


『……何の用だ?』


ジロリと土方を一瞥すると、一瞬たじろいだ土方は僕の前に座って僕と目線を合わせた。



『お前が、長州の肩を持つから』


『……ん?』


『お前が、長州の奴らの肩を持つから、気になったんだよ。


近い未来、もしもこのまま幕府についていたら俺らはどうなる?』


何を言うのかと身構えた僕の耳に入って来た真剣そうな土方の言葉に、思わず少し目を見開く。

まさか土方から聞きに来るとは思っていなかったのだから、仕方ない。



『土方が聞きに来るとはな……』


『俺は、新撰組が大切なんだよ』



ため息まじりに呟いた僕の言葉に返した土方を見て、再度ため息をつく。


土方にとって新撰組が大切なことくらい分かっている。

それと同様に近藤さんを上にの仕上げようとしていることも。


土方や沖田は正直に言えばここに居るのが勿体無い程の逸材だ。


こんな、京の町を警備する仕事なんてやらずとも生きていける。


それをしないのは、2人とも……いや、ここにいる皆が近藤さんに恩を感じ、近藤さんを上にの仕上げたいと思っているからだ。