幕末を駆けた桜




『いや……別になんでもない』


『……まぁいい。
それより、お前は何故医務室から出てきた』


土方の有無を言わさぬ迫力とその言葉に、思わず肩がビクッと反応する。

それを見逃すほど、土方は馬鹿じゃなかった。



『……脱げ』


『はい?』


いきなり何を言っているんだと、顔を引きつらせて後ろに数歩後退る。


『……脇腹でも痛めてるのか』


そんな僕に諦めたらしい土方は、僕と野間を詰める事なくそう言った。


……今、こいつ…脇腹って言ったか?


土方はあの部屋にいなかった。
いや、近くにいたりしたなら気配で分かったはず。
見逃す事なんてしない。


ましてや、あの場には丞もいたんだ。
伊達に観察方様じゃない。
あいつも言っていた通り、観察方は気配に敏感で人間観察能力に長けている。



だとするならば、土方は今少し僕と話している間に僕が脇腹を痛めていると見抜いた訳だ。


……これは、観察方驚きの人間観察力じゃないか?



『何で分かった?』