幕末を駆けた桜




大きい木の前に着き、木を見上げると、綺麗な桜が咲いていて思わず見とれてしまう。

そう言えば、今は春だったな。


僕の住んでいた地域には桜の木がなかったから、そこまで春というものを感じたことがなかったけど。

ここまで綺麗なら、遠出してでも見ればよかった。


惜しい事をしたなと思いながら木に足をかけ、登ろうとした僕の肩を、誰かが力強く掴んでくる。


『僕になんか用⁇』


そう言いながら後ろを振り返ると、昼間、僕を追いかけてきた男がにっこりと笑い。

昼間の時の奴とは違い、美丈夫の男が肩を掴んでいた。


『お前、昼間の…』

『覚えててくれたんですか〜⁇

昼間は逃げられちゃいましたからね‼︎』

今度は逃しませんよと言って、より一層綺麗に笑った男から思わず距離をとろうとあとずさる。


『また後ずさるんですか?』


『何でだろうな?』



お前の笑みが怖いんだよとか言った日には、僕の命がなくなる気がするんだよな。


『一緒に来てもらえますよね⁇』