幕末を駆けた桜




『あ、そうだ。ありがとうな、真白』


……いつになればたどり着くのか。とか、この廊下長すぎるだろうとか考えていた僕の耳に、当然の坂本からのお礼の言葉が入り込む。

僕、坂本に何かしたか?
したのならすまないが、全く記憶にない。


『……何が? 坂本に礼なんか言われる覚えなんてないけど』


『だろうな。
だって、薩摩の西郷隆盛と大隈重信を引っ張り出すのに、お前の名前使った礼だしな』



『……はい?』



大隈重信と西郷隆盛を引っ張り出すのに僕の名前を使った、だと?

じゃあつまり、坂本は、何らかの方法で僕の名前を使いながら、薩摩と長州を結びつけたと?


…なんで迷惑な野郎だ。
それじゃあ、今回拉致られたのはその交渉か何かの代償とか、そんな感じの理由か?


こいつが勝手に僕の名前を使ったせいで、僕は意味不明なところに拉致られて、今ここに居るのか?