幕末を駆けた桜




『おかしいだろ…? 今、新選組の間で体調不良者が続出してるって情報は掴んでたから、結構大勢で押しかけたのに』



僕を探るような視線を向けながらそう話す坂本に、心の中でホッと胸をなでおろした。

どうやら、あの人はちゃんと戦ってくれたらしい。

今回、山南さんを屯所に残してきたのは正解だった。


新選組前川邸の奴らで、思想が異なる幹部は2人だけだしな。


『……それで、お前は僕が何か策を練ったと思ってるのか?』


『それしかないだろ?
あんな事考えられるのは…と言うより、頼めるのは真白しかないねえよ』


ま、他の奴らはお前のせいで失敗したなんて分かってねえから安心だろ?
と、付け加えて笑った坂本に、呆れ顔でため息をつく。


ああ、うん。こいつはこんな奴だったよ。


勘は鋭いが、どこか甘い。
敵だ敵だなんて考えて構えていた自分がバカバカしくなってくる。


『坂本は、変わらないよな』

『ん? 真白だって全く変わって無いけど』



絶対意味分かってねえよ、こいつ。

お気楽だな、本当。
僕が屯所に用意しておいた対策よりも、お前がどうやって薩長を結びつけたかの方がよっぽど不思議だよな。