幕末を駆けた桜




『なんかの縁でまた会ったら話しかけろよ。

無視したら、斬り殺す』


ニヤリと口角を上げてそう言った坂本は、何かから身を隠すように慎重に外に出て、早足でどこかに消えて行った。




『……何だよ今の台詞』


斬り殺すとか、いつの時代の話ししてんだよって感じだろうが。

……じゃなかった。

そんなことが言えるのは現代だったからであって、この時代ではそれが普通なのか。


何ともなれない時代の違いに頭がまだ付いていっていないな。


柱にもたれ掛かり、大きなため息を1つ吐く。


『僕も、そろそろ出て行かないと』



いつまでもここにいることなど出来ないため、坂本と同じように辺りを見渡して外に出る。



行く当てもなく、ふらふらと京の街を歩いているうちに、日が沈んだ辺りが暗くなっていった。



『……マズイ。

この時代、街灯すらないのか』