『……お前、何しでかしたんだ』

『俺は普通に正面から入って来ただけだ』




『普通に正面から入った奴が、そんなもん持ってるわけ無いだろう?!』



建物の陰に隠れて、鬼が追ってこないか確認しながら小声でそう怒鳴る。


…小声でとなるの難しいんだよ。
本当は大声で叫びたい気分だけど、生憎それも目の前の…坂本のせいで成せない。



『それより、何で御宅の副長さんはあんなに怒ってんだ?』



『確実にお前がそれを持ってるからに決まってるが?』



本当に分からないとでも言うように首をかしげた坂本を睨み付け、坂本の手にあるものを指す。


それ…とは豊玉発句集の事であり。
そうなると、鬼とは土方のことであるが。



正面から入って来ただけのこいつが、何故こんなもの持ってるんだ。


そりゃあ追いかけられるに決まってる。



『これか? これ、さっき沖田がくれたんだよ』


『は?』



ニッコニコの笑顔でそういった坂本の顔を見上げて、思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。


沖田からもらった…だと?
じゃあ、これを取ってきたのは沖田でこいつは巻き込まれたってわけか。



『…沖田からの物を受け取るお前が悪い』