『名を?』


『……神楽、真白です』


僕の名前を2、3度口にした芹沢鴨は、まるでおもちゃを見つけた子供のような笑みを浮かべていた。



『そうか。儂は芹沢鴨。
好きなように呼んでくれ』


まさか、さん付けを取るわけにはいかないし。
だが自分の中では芹沢鴨なんて呼んでいるからな。

鴨さん…くらいで良いだろう。




『では…鴨さん、と』


『……敬語は要らん。
さんも要らぬが…抜けそうにもない。
まぁ、良いだろう』


鴨さん呼びで賛成してくれた芹沢…鴨さんにバレないよう、口元に笑みを浮かべる。



1つ目終了…


後は、坂本がうまく、少しでも近藤さんを動かしてくれさえすればいい。





『それにしても、真白は何故坂本を?』


『京の町に来て、始めに出会ったのが坂本だった』


『それはまた…随分と不思議な縁だ』


また酒を煽り始めた鴨さんの杯に酒を注ぎながら、首をかしげる仕草をしてみせる。

『鴨さんもそう思うか?』


『お前には飽きそうにもないな』



今度こそ声をあげて笑った鴨さんに、皆の視線が集まったが、前川邸の皆不思議そうな顔をして僕に視線を送る。


その中で目のあった土方に、軽く…笑みを浮かべてみせたのだった。