『お前は…一体何を迷ってる』


『そうだよ。真白君は、もう僕たちの仲間なんだからね』


握り締めていた僕の拳を包み、沖田が優しく指を解いていく。

土方と共に、坂本へと刃を向いて。




『……ごめん、坂本』



本当、何回この迷いに出くわせば気がすむんだ。僕は。


選択肢なんて、初めからあるはずないだろう。
近藤さんに忠誠をと決めた日から……。


『どこまでいこうと、例え、1ミリも僕の考えを理解してくれないとしても。

僕の家族は彼らで、仲間は彼らだけなんだ』




『誘ってくれてありがとう…でも、僕は何があっても、お前の所には行けない』



土方と沖田の背から、坂本を見つめてニヤリと口角を上げた。


『僕を仲間にしたいのなら壬生浪士組…いや、新撰組事仲間に引きずり込め』



坂本の思想も、誰も理解してくれない。
だから、坂本も、自分の考えを理解し、共に考えてくれる仲間が必要なんだ。


『壬生浪士組局長近藤勇殿から伝言を預かった』


未だに警戒し、刃を向ける土方と沖田を押しのけて、坂本の目の前へと立つ。



『明日、巳の刻にて。

我ら壬生浪士組屯所で待つ』


そう言った僕に、坂本の目が見開かれた。


『お前…』



『僕は、何も出来ない。
でも、お前なら…近藤さんを説得するくらい容易いだろう?』



わざとそう言葉を遮って、ニヤリと口角を上げて笑ってみせる。



『話し相手にはなってやる。
だが…皆には見つからずに侵入して来い』