友達以上恋人未満


響side


しばらく座って待っていると担任らしき人が入ってきた。
うわ、コーチじゃん!!
え、担任ってことだよな、最悪…。

「俺がこのクラスの担任になった田畑です。よろしくお願いします」

まじかよ…。
せっかく楽しめると思ったのに最悪だ。
しかもこいつ話が長し。
適当に話を聞いていたら名前を呼ばれた。

「じゃあ、澤島!」

「…はい!」

反射的に答えたけど今から何すんの。
手招きをされたので前に出ると、声デカ女と目があった。
あっちも目があったのに気づいたらしく、体をビクッとさせた。
そんなびびらなくても。
俺は笑いそうになったが先に目をそらされた。
案外おもしろいやつかも。

「今から自己紹介をしろ」

自己紹介とか、小学生かよ。
まあ、でもさっさと終わらせよう

「えっと、澤島響です。野球部です…。あとは…。」

他に言うことなんかないだろと思いながら担任を見る

「好きなものとか好きな人とかあるだろ」

いや、ねーだろ笑
今時そんなこと言うのかよ。

「好きなものは特になしで、好きな人はいません…。」

彼女いるけどさすがに言わねーよな。
俺には年下の彼女がいる。

「よし、ありがとう」

拍手の中、俺は自分の席に戻る。

「じゃあ、次は澤田!」

クラスがシーンとなる。
澤田?

「澤田いないのか?…いるじゃないか返事しろ!」

「…は、はい」

え、声デカ女って澤田って名前なんだな。
澤田…。

「さ、澤田琴美です。部活は…入りません…よろしくお願いします」

小声でそう答えた澤田。
あの声の大きさはどこ行った笑
そう言い、澤田は席に戻ろうとする。
すると担任が、澤田の手を引っ張り、

「おいおい、それだけか?好きなものとか好きな人とかないのか?」

動揺する澤田。
まじかよ、そんな気になることか?
田畑は澤田を自分のとこに引き寄せ、澤田の背後にたった。

うわ、まじかよ。
田畑、あいつの胸の位置ガン見じゃん。
きもいな

「えっと、どっちも特になしで」

「それはダメ。どっちか答えろ」

しつこすぎだろ。
困った顔で担任を見つめる澤田。
さすがにかわいそうと思い、席を立とうとしたとき、

「先生!澤田さんのときだけしつこくないですか?」

後ろの席の崎平が言った。
お、ナイス。と思いながら俺は担任をじっと睨んだ。

「ま、まあもういいよ!」

澤田から離れ、次はと選び始める田畑。
澤田は担任をじっと見てクルッとこっちを向き歩いてきた。
崎平の前に立ち、

「ありがとう」

ニコッと笑った。
ドキッ…。
あれ、おかしい。俺に言われてないのに。
崎平は顔を真っ赤にさせながら、

「困ってたみたいだから…。」

澤田琴美…。
俺は澤田から目を離せなかった。

チラチラと澤田を見ながら担任の話をザッと聞き、入学式があっとゆうまに終わった。
クラスには野球部が少しいて、そいつらと一緒に部室に向かうと、監督がいた。

「「おはようございます!」」

「おはよう。今日は練習なくなったから帰っていいぞ」

お、らっきー!練習ないじゃん
俺は携帯を出して、親に一緒に帰るとメールした。
親と合流して、車に乗り込む。

「はあ、つかれた」

「お疲れさま!どうだった?」

澤田…。思い出す。

「別に、普通…」

「あっそ、あ、そうそう!澤田さん家と会ってね、話してたら一緒にランチどうってなってランチしに行くから!あんたも来るでしょ?」

は、澤田?!

「澤田って二組の?」

「そうよ、あら?もうお友だちになったの?」

澤田と…ランチ。
行きたい。だけど話せるだろうか。

「まあとりあえず待ち合わせもうすぐだから行くわね」

親はそう言い、待ち合わせの場所に向かった。
澤田たちをまだ来てないらしく、車で少し待っていた。

「あ、きたきた」

親が車から出て、澤田たちの車のほうに向かった。
俺もあとからついていく。
すると案の定、澤田はなんで?!って顔で俺を見た。

「こんにちわ、琴美ちゃん!澤島の母です、よろしくね!」

澤田は俺から親に目をうつし、

「澤島くんのお母さん!こちらこそ!よろしくお願いします!」

またあの笑顔。
しかも、名前覚えてたんだ。
ほら、あんたも。と親に言われたから、
俺も一応よろしくと言った。
すると澤田は、じっと俺を見て、よろしくと答えた。
なんかついてんのかな?

「とりあえず中に入りましょっか!」