「ほら、宮西!」

「……え?」

壁にもたれながら座っていた男子が立ち上がってボールを拾い、そのままぽいっとこっちに向かってパスをくれた。

それはとても正確なパスで、キャッチした瞬間で私の胸元でパシッと気持ちのいい音を立てる。


「あ、ありがとう、ヒロ」


何これ……なんでまたヒロなんだろう?

しかもヒロの手前にも何人か男子が座っていたのにも関わらず、奥の方に座るヒロがわざわざボールを取りに来てくれたのだ。


テストのこと根に持ってるわけじゃないのかな。

それなのにこんなに私の方を見てるってことは、もしかして……


いやいや、そんなことは絶対にない!

一瞬でも自惚れてしまったことを少しだけ恥じながら、私は熱くなる顔を片手で押さえて自分のコートに戻った。