「まあ、また俺が恋しくなったらいつでも相手してやるよ」

そう言って大樹は荷物を片手に玄関を出ていく。


玄関のモニターに大樹の姿を確認したときから、揉め事になると思っていた。しかし予想に反して、案外あっさりと大樹は引き下がっていった。

今更ながら、大樹の中での私の扱いを再確認させられたのだ。


私は安心したのかリビングに戻った瞬間に、扉の前で腰を抜かしてしまった。

「大丈夫か?」と大嶋に聞かれて、私は小さく頷く。しかし手は震えて汗までかいていた。


「じゃあ、俺も帰るよ」


大嶋がソファから腰を上げた。帰ってほしくないのに、私は腰を抜かしたまま立ち上がることができない。


今帰ったら二度と大嶋とは会えない予感がする。