どうしよう、なんで今更大樹がくるんだろう。


私の住む部屋には廊下がなく、リビングと玄関は隣り合わせになっている。

玄関に出た瞬間にリビングの扉を閉めた。無駄だとはわかりつつも、大樹との会話は大嶋に聞かれたくない。


「よう、灯里。久しぶりだな」


なんでここに来たかは聞かなくてもわかる。これほど単純なやつもいなかった。どうせマナに振られたんだろう。


「今更何?私、ずっと大樹と話したいことあったのに」

「ああ、悪かった。俺も忙しくてさ。上がってもいいか?」


「今は無理……だめだって、ちょっと待ってってば!」


私の返事を聞かずに、靴を脱いで部屋に上がり込もうとする。私は焦って両手を前に出しながら彼を制した。