「私ね、前まではこんなんじゃなかった。今はもう、なんだかだめになってる。

大嶋と二人でいたら、緊張しちゃってしょうがないんだ……」


もしかして、泣いてる?

声がとても弱っているように聞こえて、俺は宮西の方を振り返る。


宮西は泣いてはいなかった。俺が振り向くと肩にかけた鞄の紐をぎゅっと握り、顔を斜め下に向けて強く目を閉じていた。


その時、武田が宮西を呼びにきた。「じゃあね、大嶋」と言って、教室を出て行く。


教室に一人取り残されていた俺は、呆然としていた。


俺、なんでまた宮西がヒロを好きになるなんて思っていたんだろう。


あんなの……今のあの言葉、どう考えてもあいつは俺を好きとしか思えなかった。