大嶋が立ち上がる。きっと帰ってしまうんだ。

引き止めようとして、慌てて腕を掴む。大嶋のため息が聞こえてきた。


「俺さ、お前が何を考えてるか、わかんねえよ」


その時だった。ピンポンと玄関のインターホンが鳴った。時計を見ると、22時を過ぎている。どう考えても非常識な時間。

嫌な予感しかしない。玄関のモニターを見ると、案の定大樹の姿が映っていた。


どうして今頃。しかもこのタイミングで。カーテンの隙間から明かりが漏れているから、居留守を使うことはできない。


大嶋が「出たら?」って言いながら、ソファの上に乱暴に腰を下ろした。


私は恐る恐る玄関の扉を開けた。